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『世界は千里でひとつになる The World Comes Together in Senri』

海外子女教育情報センター(INFOE)発行 『月刊 INFOE』連載記事より


第17回 千里国際学園の日本語・国語の授業

国語科 福島浩介

国語科と日本語科

 千里国際学園には日本語という言語を教育する教科として、日本語科(JSL=Japanese as a Second Language 第二言語としての日本語の教育を行う)と国語科(JNL=Japanese as a Native Language 第一言語としての日本語の教育を行う)の二つがあります。日本語科には専任3名・非常勤3名、国語科には専任5名・非常勤3名の教員がおります。このように科としては二つに分かれていますが、同じ研究室にデスクを並べているので緊密な連携が行われています。基本的には、日本語科がOsaka International School(以下OIS)の児童・生徒の授業を、国語科が千里国際学園中等部・高等部(以下SIS)の生徒の授業を行いますが、習熟度に応じて、SISの生徒が日本語の授業を、OISの生徒が国語の授業を履修することも日常的に行われています。

生徒それぞれに合った授業の履修

 本校では多くの授業で、それぞれの生徒の背景・条件に合った授業を履修できるように、習熟度別に授業が構成されています。中等部の日本語・国語に関しては、OISの日本語Foundation、Standard、AdvancedそしてSISの基礎国語・国語というふうになっています。生徒の皆さんは、入学・編入学時のオリエンテーションにおいて日本語のプレイスメントテストを受け、どのクラスを履修するかを決めます。基本的には、国語科が「このクラスが合っているのではないか」という示唆をするわけですが、それぞれの生徒の意向も参考にします。

 中等部では、日本語の授業と基礎国語・国語の授業が同じ時間帯に行われていますので、学期ごとにクラスの移動が可能になっています。高等部では、多くの選択可能な授業がありますので、学期ごとに履修を変更することが可能で、これによって各自の習熟度やニーズに対応します。(イメージとしては大学の授業の選択と同じようなものです。今年度からは、履修登録期間内に学内のコンピュータを使って各自が分かりやすく登録でき、また教科書の注文もできるようになっています。)

 このように、その時点時点で各自にあった授業ができるように、また、各生徒の成長に応じて履修を変更しやすいように、本校の時間割のシステムは出来上がっています。

 因みに、本校の開講科目一覧は http://www.senri.ed.jp/departments/curriculum2.htmで、各教科の説明は http://www.senri.ed.jp/departments/ でご覧になれます。

日本語・基礎国語・国語

 さて、前述のプイレスメントテストで日本語の習熟度を測り、それぞれの生徒にあった授業を履修してもらうように時間割を組むわけですが、ここでは中等部の生徒に対して、日本語科と国語科が提供している授業の内容を簡単に説明したいと思います。

 先ずは日本語の授業。日本語以外の言語が第一言語であるとか、また学校で日本語を学ぶ機会が少なかったなどという理由で、「国語」の授業に慣れていない生徒諸君が、日本語科が開講している授業を履修します。ここでの目的は、「日本語という言語を学ぶことに慣れる」です。日本語のクラスを履修した生徒は、ここでの一〜三学期間ほどの学習を経て、基礎国語のクラスへと移動します。

 次に基礎国語のクラスです。このクラスは、ほかの学校にはあまり無いクラスではないかと思います。現在、「基礎国語」というクラスは、中等部一・二年生のみ対象に開講ですが、中等部三年生以上は各生徒の授業選択の自由度があがってくるために、「日本語」と「国語」の開講授業の中で、選択の方法によって習熟度の違いに対応しています。ここでの目的は、「国語の授業での勉強の仕方に慣れる」です。教科書は、国語の授業用のもの、また副教材も同じものを使用します。本校では、中等部の国語のクラスも大体20人前後の少人数で開講していますが、基礎国語は多くて12〜3人、少ない場合は2〜3人という、ごくごく少人数で行っています。ちなみに2007年度は春学期12人、秋学期5人、冬学期3人という具合でした。授業は、国語という科目の勉強の仕方に慣れること、国語の基礎的な事項をしっかり身につけて貰うことを目標としていますので、本文の読み、漢字(週一回の漢字テスト。通称「チャーリー」)や言葉調べ(言葉ノートの提出)、文法などの言語の事項にもより多くの時間を割きます。こういった基礎的なことは反復練習が必要なのですが、極力、単調なものにならないように配慮しています。また、SISでの学習言語は日本語を主としています。英語・音楽・美術・体育などは主に英語で授業が行われ、国語・社会・数学・理科などは日本語で授業が行われています。ですから、SISで学習するための言語を強化するという役割もあります。海外生活そのほかで身につけてきたものは大事にメンテナンスしながら、同時に日本語の力もブラッシュアップするという姿勢が大切かと思います。このクラスからも、一〜三学期間ほどの学習を経て国語のクラスへと移動します。

 最後に国語のクラスです。国語科では、中学時代を国語の基礎力の確立を目標に学習していく時期と捉えています。主に教科書の教材を扱いながら授業を進めますが、新しい教材ごとに、語句、漢字を辞書で調べて言葉ノートを作成し提出したり、教材によっては課題作文を書いたりすることもあります。その中で、思考、表現力を伸ばすことが目標です。また、毎週一回、漢字学習帳を使って漢字テストを実施し七割を合格点として、不合格の場合は再テストを行います。これは、点数を競うのではなく、覚えることが目標だからです。読書については、読書ノートを作り、記録を残していきます。各学期、長期休業中などには、教材と関連したテーマの課題読書も実施しています。言葉ノートと読書ノートは中等部の三年間を通じて一冊のノートにまとめることを推奨していて、中等部での日本語・国語の学習の成果が形として残るようにしています。

まとめ

 千里国際学園では、それぞれの生徒の多様な背景を大切にしつつ、特に帰国生徒の皆さんには、必要とされる力をつけてもらうための「補償教育」という考え方での国語教育を行っています。今まで違う文化の中で身につけてきたものを大切にしつつ、必要なものを加えていくということです。もちろん、日本語が第一言語である場合はその限りではなく、どんどん知識・運用能力・鑑賞力を深めていってもらえばよいわけですけれども。
 そして、いろいろな国語の授業の中で、日本語には慣れ親しんでいるけれども積極的に意見を述べるのが苦手な生徒と、日本語は多少慣れていない部分もあるけれども積極的に面白い意見を述べられる生徒が互いによい影響をしあって、面白い化学変化が生まれればよいのかなと思っています。

福島浩介
国語科
 1966年生まれ。1991年、広島大学大学院教育学研究科博士課程前期修了後、開校当初から国語科教諭として勤務。校務分掌は教務センターでコース・アドバイザー、高等部三年学年主任(2008年度)。趣味は音楽で、中学から大学までは吹奏楽、社会人になってからは12年ほどアマチュア・オーケストラで、また近年はジャズのBig Bandを主催し、トランペットの演奏を楽しんでいます。校内のミュージカル公演でもオケピの中で吹きます。特技は、コンピュータ、調子のいい英語会話、餅つき。昨年からは京都外国語短期大学で非常勤講師として、大学生の日本語リメディアル教育にも携わっています。


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Senri International School Foundation, All Rights Reserved. Modified 2008/06/03