『世界は千里でひとつになる The World Comes Together in Senri』 海外子女教育情報センター(INFOE)発行 『月刊 INFOE』連載記事より 第13回 数学の授業ではグラフ電卓を有効利用 数学科 馬場博史 T^3(T Cube)とはTeachers Teaching with Technologyの略称です。このプログラムは、米国オハイオ州立大学のFrank Demana教授とBert Waits教授の提唱で始まりました。両教授は、1988年にコンピューターとグラフ電卓のビジュアル性を利用して”Pre-Calculus”(”Calculus=微積分” に先行する米国高校でのコース)の教育や学習を促進する方法を学ぶための研修会を創設し、その後オハイオ州で毎年開催しました。そして1995年の研修会で、このプログラムを国外にも広げる必要性が唱えられ、以後世界中へと広がっていきました。そして2007年現在、25ヶ国を超える運動へと発展しています。 千里国際学園は、主に帰国生を対象とする日本の中高一貫校である千里国際学園中等部高等部(SIS)と、主に外国人を対象とする大阪インターナショナルスクール(OIS)とを同一敷地校舎内に併設しています。SISには海外からの帰国生が毎学期編入して来ます。ある日、一人の帰国生がグラフ電卓を手にしていたことがきっかけで、本校でもグラフ電卓を授業で利用しようという機運が高まりました。そして1999年、日本の普通科中学校高等学校では初めて、生徒全員が常にグラフ電卓を手にし、それを最大限に利用するユニークな授業が始まりました。以後、T^3 Japanの研修会でも活発に授業実践報告をしています。 グラフ電卓を利用するとグラフを描く力や計算力が落ちるでしょうか。答は否です。生徒は自分で描けるグラフは自分で描き、自分でできる計算は自分でします。そして、それが正しいかどうかの確認にグラフ電卓を使います。手元で正解を容易に確認でき、その結果をもとにすぐに論理的思考ができるということが大きな利点のひとつなのです。さらに中学・高校で習わないような複雑なグラフの概形や繁雑な計算の確認も楽にできることで、これまでに扱えなかった困難な問題や大学レベルの内容でも、無理なく学習できるようになりました。またもうひとつの利点として、根号や円周率などを含む答もその近似値を簡単に確認できるので、その数としての存在をより確かなものとして認識できるという効果もあります。 OISからはもちろん、SISからも少なくない生徒が海外の大学に進学します。IB(インターナショナル・バカロレア=世界共通の大学入学資格試験)の科目 “IB Math.S”、”IB Math.H” や、米国の大学で教養課程の単位として認められる APテスト(Advanced Placement Test)の科目 “Calculus”、”Statistics”、米国の大学で入学資格試験に使われるSAT(Scholastic Aptitude Test)においても、グラフ電卓の必要な問題が出題されています。日本でも、現行の教育課程でグラフ電卓の使用が初めて明示されました。中学校学習指導要領解説には、「電卓の手軽さとコンピューターの簡易機能を持ちあわせたグラフが表示できる電卓の活用も積極的に行いたい」と書かれています。 SIS数学科は、中学から高校を経て大学へと続く学習内容を見据えて積極的に高大連携をも推進する「縦へと伸ばす視野」、そして世界の情勢を把握しつつ国内他校へも実践報告を伝えていく「横へと広げる視野」とを持って、常に意欲的に教育・研究活動を行っています。 Senri International School Foundation, All Rights Reserved. Modified 2007/10/29 |