[SIS][OIS]

『世界は千里でひとつになる The World Comes Together in Senri』

海外子女教育情報センター(INFOE)発行 『月刊 INFOE』連載記事より


第5回 たかがスポーツ、されどスポーツ

保健体育科 平井太佳子

 「海外遠征」なんて素敵な響きなんでしょう。イチローが、北島康介が、やわらちゃんが、室伏広治が、中村俊介が、メジャーリーグに、オリンピックに、世界選手権に、ワールドカップに、選ばれたトップ・アスリートたちが世界に旅立っていきます。その同じ空港からSISの生徒たちも試合をするために飛び立ちます。

 「たいした実力もないのに外国まで行って試合をするなんて贅沢な!」と批判されることがないわけではありません。でも、ちょっと隣町の学校まで練習試合をするような感覚で、隣の国の高校生と試合をするというのも良いんじゃないでしょうか。地球市民であるSISの生徒にとって、国境もパスポートもそれ程大きな意味がある訳ではないのです。実際には外国籍の生徒にとってパスポートは大きな問題なのですが、SISの生徒たちはそのことすらも当然のこととして対処しています。

 APAC(Asia Pacific Activity Conference)というリーグは1994年に設立されました。フィリピン、韓国、中国、日本にあるインターナショナルスクール6校でスポーツ、文化・芸術を分かち合っています。スポーツではバレーボール、テニス、バスケットボール、サッカー、野球の試合が行われています。文化・芸術活動では、演劇、コーラス、ブラスバンド、オーケストラのコンサートが行われています。

 学生のうちから贅沢に慣れることには私も反対です。生徒たちは格安航空券を用い、5日間の厳しい日程をこなします。泊まりは開催校の生徒の家にホームステイをします。ただ単に費用を抑えるだけではなく、ホームステイこそAPACの真髄だからです。バディの生徒といろいろな話をし、ファミリーと食事を共にし、その国の文化、その家族の文化に触れます。時には英語のわからないファミリーのお世話になることもあり、その珍道中たるやちょっとしたエッセイ集になりそうな程です。「毎朝シリアルで毎晩ピザやねんっ」「晩御飯のおかず真っ赤でめちゃ辛かってん。みんな平気で食べてるけどウチ無理やったわぁ」「日本人やからってご飯炊いてくれた。けどお釜一杯で、とても食べきられへんかった…。めっちゃ申し訳ない」「オレんとこ、晩御飯食べへん。オレのためだけに作ってくれる」毎朝の報告は笑いと涙なしでは聞けません。

 最終日の朝送ってくれたファミリーと涙の別れをすることも少なくありません。生徒たちが尊敬と理解と感謝の心をもって振舞い、短い間でもファミリーの一員として受け入れて頂いた証拠と嬉しく思いながら眺めています。e-mailが普及した今日では、その後の交流も続いたりしているようです。ホストのバディと別の試合やイベントで再会するのも楽しみの一つです。抱き合い、あれからの半年、1年のことを機関銃のように喋りまくっています。またSISが開催校となった場合、積極的にホストファミリーを引き受けてくれるのも、そんな体験をした生徒たちの家庭です。口では言い表せないくらいお世話になったから、今度は温かくもてなしたいと快く引き受けてくださいます。
「海外遠征」なんて素敵な響きでしょう。ボールを蹴ったり打ったり投げたりするのはそれほど上手ではないかもしれません。でも、SISの大使として、地球市民として選ばれた者だけが得られるその恩恵の大きさは計り知れません。


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Senri International School Foundation, All Rights Reserved. Modified 2006/04/25