第20回 千里国際学園の情報科の授業
情報科 合志智子
情報科の授業が目指すもの
コンピュータの授業というと、タイピング、WordなどのワープロソフトやPowerPointといったプレゼンテーションソフトの使い方を繰り返し練習し、覚えるようなものを想像される方が多いのではないでしょうか。SISの情報科では、「情報科の授業=情報機器やコンピュータソフトの使い方」という捉え方で授業を組み立ててはいません。これまでのこの「シリーズ 世界は千里でひとつになる The
World Comes Together in
Senri」の連載のなかで何度か紹介されていますが、SISの授業ではレポート作成・実験・プレゼンテーションを重視し、考える力・表現する力を徹底して養います。これは、この学校にいる最大6年間だけでなく、大学生になっても社会人になっても、世界中のどこで活躍していても必要なスキルだからです。
情報科の授業
中学1年生から高校卒業までに受けることのできるSISの情報科の授業は、全部で12講座あり、大きく分けて2つの柱に沿って構成しています。1つ目はまさにこのようなスキルのうちの「調べる・まとめる・レポートを書く・プレゼンテーションをする」力を徹底的に身につけ、他の教科で実際に活用できるようにする授業です。2つ目は、高校生向けの多種多様な、いかにもコンピュータらしい授業の数々です。現在では、コンピュータの利活用は通信やマーケティング、アートといった分野にもどんどん広がっています。各自の興味、関心、将来の目標に応じて、コンピュータを利用するいろいろな分野に、広くもまた深くも取り組めるように工夫しています。
情報科におけるプレゼンテーションへの取り組み
「調べる・まとめる・レポートを書く・プレゼンテーションをする」スキルは、情報科の授業だけで、または1つの授業を受けただけで身に付くものではありません。スキルの定着を図るために、情報科の授業では他の授業と連携して、卒業までに何度も繰り返して段階的にかつ着実にスキルアップできるよう授業を組み立てています。
たとえば、中学1年生の情報科の授業は総合科目の「知の探検隊」の授業と連携し、1年間で徹底的にこれらのスキルの基礎を身に付ける授業を行います。この授業の流れを以下の表に示しますが、一方の授業で学んだことをもう片方の授業で直ちに実践したり、一方の授業で取り組んだテーマについて、もう片方の授業でプレゼンテーションに仕上げたり、同じような手法を繰り返したりしてスキルの定着を図る仕組みになっています。
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総合科目「知の探検隊」での取り組み |
情報科目「コンピュータ基礎7」での取り組み |
目標 |
学び方を身に付ける |
基礎的なコンピュータスキルとプレゼンテーションスキルの習得 |
「調べる・たずねる・考える・まとめる |
発表する」方法を習得 |
春学期 |
「発表を2回実施」 |
・Wordの操作、文書作成、描画 |
・資料から情報を抽出し、まとめる |
(他の教科でのレポート課題ができるレベル) |
・発表する(紙芝居形式) |
・Webを使った効果的な情報の検索 |
・発表を評価する |
・PowerPointの操作 |
秋学期 |
「人物調べ」プロジェクト |
「PowerPointのプレゼンテーション(3分/1人)」 |
(テーマは歴史上の人物を1人選ぶ) |
・発表内容の構成を考えるときの留意点 |
・図書館を使った情報検索 |
・スライドの箇条書きの表現方法 |
・情報カードを使った情報の整理 |
・見栄えの良い文字と図の配置 |
・アウトライン作成の留意点 |
・聴く人をひきつける発表に必要なこと |
・資料リストの作成方法 |
・質疑応答 |
・レポート作成 |
・発表の評価方法 |
冬学期 |
「PowerPointのプレゼンテーション(5分/1人)」 |
授業なし |
これは、帰国生、一般生が一緒に取り組む授業ですので、生徒がこれまでの異なる環境の中で身につけてきたこともさまざま、日本語力もさまざまです。それがプレゼンテーションの取り組みの中でいろいろな形で発揮され、興味深い意見や質問がでたり、予想もしなかったストーリーで話が展開したり、発表内容に鋭い質問や批評が出たり、といったこともよくあります。さらに、中学1年生でも既に自分独自のプレゼンテーションスタイルを持っていることに感心したり驚かされたりすることも少なくありません。このような中で自分の発表を行い、他の生徒の発表をいくつも見ることによって、生徒同士が互いに刺激を受けます。また自分自身のできばえを振り返ることで、他の生徒と比べてではなくて自分自身の中でのレベルアップを図る良い機会にもなっています。生徒のプレゼンテーションの発表の機会も多くあり、授業中はもちろんのこと、毎年、校内で実施される「プレゼンテーション大会」や、今年6月に2回目が開催された「SIS
Education EXPO 2008」では、生徒たちが元気よく生き生きとした発表を行っています。
中学1年生以降は、さらに中級・上級のプレゼンテーションスキルを磨くクラスを設定しています。「Multimedia Contents
制作」は、情報科では最もレベルの高いプレゼンテーションに取り組む高校生のクラスですが、実際に受験する大学のAO入試の課題(レポートやPowerPointでのプレゼンテーションなど)を持ち込んで、入試準備に取り組むこともでき、うまく活用することにより実際に良い結果を出している生徒もいます。中学1年以降の編入学で情報科や「知の探検隊」の授業を受ける機会がない生徒の場合でも、同じような内容の授業がいくつかありますので、入学時期や学年にかかわらず各自の状況に合うレベルから、同じような道筋でスキルアップができます。
高校生向けの情報科の授業
高等学校の教科「情報」は2003年に設置されました。その学習指導要領の定める内容は、SISでは中学1年生でほとんどを終了しているため、高校生向けの情報の授業は、もっと幅広くまたもっと深い分野を目指しています。
デザイン系のクラスでは、CG、クレイアニメーション、FLASH、Webページ作成、Tシャツ制作、コンピュータによる作曲などの実践的なテーマに取り組みます。プログラミングのクラスでは、いろいろなプログラミング言語に対応できるよう、アルゴリズムや典型的な処理の方法をきちんと学んだ上で各自がコンピュータゲームを作成します。LEGO
MindStormsというモーターやセンサーを備え、プログラムを組み込めるレゴブロックを使って、ヒューマノイドなどのロボットの制作や動作の制御を学ぶクラス、商品の流通や広告宣伝などを学び、実際にネット上にオンラインショップを開設運営するマーケティングのクラスもあります。これらのほとんどが実技中心の授業です。生徒の要望によって生まれた授業もあります。コンピュータが大好きで、卒業までにすべてのコースを取り尽した生徒もいます。プログラミングが大好きな生徒が、今年も秋に開催されるパソコン甲子園というコンテストに、2チームでエントリーしています。制限時間内に課題のプログラムをいくつ完成できるかを競うもので、まずは地区予選を勝ち抜いて本選へ出場することを狙っています。
卒業後の進路に目を向けると、授業で制作したCG、作曲作品、コンピュータゲーム、クレイアニメーション、映像作品などを持参してAO入試にチャレンジし合格する生徒や、SISの授業で体験したことがきっかけで興味を持ち、将来の進路をコンピュータ関連の分野に決める生徒が年々増加しています。これらの生徒は情報科学、情報理工、映像、デザイン、アニメーションなどの分野に進学しています。
以上、SISにおける情報の授業における取り組みの一端をご紹介させていただきましたが、情報科で取り組んだ生徒の作品はSISのWebページで公開していますので、どうぞご覧ください。
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Modified
2008/10/19