Senri International School (SIS)

研究紀要

第6号(2001)


はじめに

福田國彌
学園長

 千里国際学園は、1991年、学校法第1条校である大阪国際文化中等学校・高等学校(OIA:OsakaInterculturalAcademy)と各種学校である大阪インターナショナル'スクール(OIS:OsakaInternationalSchool)を同じ建物のなかで併設して発足しました。わが国の経済活動が世界規模に拡大したことに対応して、一般生徒、帰国生徒、外国人生徒が共に学ぶ学校を作るべしとの元アメリカ駐日大使ライシャワー博士の提言を受け、臨時教育審議会が第3次答申でこうした学校を新国際学校と名付け、その必要性を提案しました。

 千里国際学園は、この新国際学校の内容を具体的に実現したわが国唯一の学校であります。千里国際学園は、2001年には創立10周年を迎えることになります。この間1999年春からOIAの名称を千里国際学園・中等部・高等部(SIS:SenriInternationalSchool)と変更しましたが、一貫して、日英バイリンガル、多文化理解、小人数による個性と才能の伸長の教育を行い、社会からの高い評価を頂いています。帰国生徒、とくに現地校で学んだ生徒は、わが国の学校で学んでいる同学年の生徒と各教科において学習の度合いに差異があり、かつ随時編入制により春・秋・冬学季に学園に入学します。一方、一般生徒においても中学から高校へかけて生徒たち個々の才能や個性が顕現し、それぞれの才能の種類によって教科への興味が異なるのは当然であります。

 こうした事実を踏まえて、1999年の春から暫定的に、そして同年秋から本格的に、トライメスター、学期完結授業、無学年単位制等を実施しました。こうした教育方法とその実施の詳細は、この冊子をご覧頂いて御理解頂けることと思いますが、本質的には、こうした教育によって、上述のような学園に入学する生徒の多様な履歴に対応し、かつ画一教育を避け、生徒の1人1人が本当に知的に豊かになって思考力を身に付け、才能と個性を伸ばしてしっかりした「自個」(ここでは「己」の代わりに「個」インディヴィデュアリティの文字を使用)を形成することを目指しています。かつまた、そうした「自個」が「他個」とリスポンスし合うことで、学校のなかでもよき社会性、すなわち相互のリスポンシビリティを身につけてくれればと思っています。私は「帰国子女教育」という特別な教育があるとは考えていません。ただ常に「教育の本質とは何か」という問いを問いかけられていると思っています。教育の内容と実施の方法が不可分であるという意味では、私共は今後ともさらに努力を続けて行かねばならないと自覚しています。

 私共は、今回の新しい教育方法は現在のところ順調に進行していると思っていますが、ご批判やご忠告があればどうか忌憚なくお報らせ頂ければ有難いと存んじます。


1997-2001 Senri International School Foundation, All Rights Reserved.